臓腑
東洋医学の診断法~臓腑の関係
五臓六腑に分布している臓腑の気は各臓腑の生理機能を推進しているが、内因・外因・不内外因によりその生理機能が失調することがある。ある症状は一つの臓や腑単独の病変というより、いくつかの臓腑機能の失調が関連して現れるものだが、ここでは各臓腑の病症の特徴を挙げてみる。
肝・胆
肝気鬱結:情緒不安定や精神的ストレスにより肝の疏泄作用が失調すると、イライラ、怒りっぽい、胸脇脹痛、乳房脹痛、下腹部の脹痛などの症状が現れる。
肝火上炎:肝気鬱結が長引くと肝鬱が化火し、その火が頭部に上炎して頭痛、目の充血、口が乾燥するなどの症状が現れる。
肝血虚:出血や血の生成不足で肝の蔵血機能が充分でなくなると、月経血量減少や頭顔面部や筋肉を栄養できずに目のかすみ・乾きや筋のひきつりなどが起こる。
胆鬱痰擾:肝の疏泄失調が胆に及ぶと不眠、悪心、めまい、耳鳴り、口苦などの症状が出る。
心・小腸
心気虚:先天の気の不足や久病(慢性病)や情動失調などにより心気が虚して、心悸・胸悶・息切れが、さらに進んで心陽虚になると胸痛・四肢の冷えなどがおこる。
心血虚:出血多量や熱邪による陰血消耗などで心血不足になると、不眠・多夢・健忘などの症状が現れる。
心血淤滞:淤血が形成され心血の血行障害が生じると、息が詰まる・胸部刺痛・背部への放散痛などの症状が現れる。
小腸実熱:心火が亢進すると口渇・口内炎などが、その心火が心と表裏関係にある小腸まで及ぶと血尿などの症状が現れる。
脾・胃
脾気虚:情志失調、飲食不節などにより脾気が虚すと消化不良・食欲不振・泥状便・痩せが、またさらに脾陽虚まで進むと未消化物の下痢・四肢が温まらない・腹部の冷え・むくみ・手足がだるいといった症状が現れる。
脾不統血:脾気虚により統血作用が低下すると出血傾向・血尿・月経量過多・脱力感などが現れる。
脾胃湿熱:日常的な飲酒などで脾胃に湿が停滞すると、その湿が熱を生じて運化機能が低下し、膨満感・腹部のつかえ・顔や肌が黄色い・手足が重だるいなどの症状が出る。
胃陰虚:胃陰が虚すと相対的に胃陽が活発となり虚熱が生じ、胃部にこもると胃痛がおこり、さらに熱が上昇すると胃がつかえる・しゃっくりなどが起こる。
肺・大腸
肺気虚:呼吸をつかさどる肺気が、脾虚、また外邪・痰湿停滞により虚して宗気不足になると呼吸がうまく行われずに喘息・呼吸が浅い・声に力がないなどの症状が現れる。
肺陰虚:熱病や燥邪により肺陰が損傷され虚熱が生じて肺気が上逆すると咽頭乾燥や・咳込む・から咳などの症状が出る。
痰湿阻肺:寒邪や湿邪が肺の水分代謝機能を損傷すると、咳漱・痰鳴・白く粘る痰などの症状が出る。
大腸湿熱:熱や湿が大腸に停滞すると下腹部痛・激しい下痢・肛門焼灼感などの症状がでる。
大腸津虚:熱病や慢性病により陰液が消耗されると津液も不足し、水分が不十分なため便秘・排便困難・口臭・口渇などが起こる。
腎・膀胱
<腎陽虚:先天の気の不足や老化、また精液の損傷などにより腎陽が虚すと温照機能が低下し、腰膝のだるさ・寒がり・下肢の冷えなどが起こる。
< 腎陰虚:精・陰液の源である腎陰が不足すると、脳が栄養されずにめまい・耳鳴りが、また毛髪が栄養されずに抜け毛・枯燥などの症状が出る。そのほか心に影響して不眠、多夢を引き起こすこともある。
腎気虚:腎気が虚して精蔵機能が低下すると早漏・遺精・夜間頻尿・聴力減退などの症状が現れる。また吸気をエネルギー化する納気作用が低下すると喘息・呼吸困難・息切れ・むやみに汗がでるなどの症状が現れる。
膀胱湿熱:湿邪、熱邪が膀胱、尿道に及ぶと血尿・結石・尿道熱痛などの症状が現れる。