顔面神経麻痺にかかったら病院では何科に行けばよいか、またどんな治療法をすればよいのか迷っている方々が多いと思います。一般的にまず耳鼻科へ行きます。 必要なら脳神経内科などが紹介されます。脳血管障害(脳梗塞、脳内出血)による中枢性の顔面神経麻痺が疑われる場合は、CTやMRIの検査を行います。また帯状疱疹のウイルスによるハンド症候群の場合は血液を検査することもあります。病院で行う主な治療法は最初副腎皮質ステロイドや抗ウイルス剤の点滴、また経口副腎皮質ホルモン剤を服用し、10日後に血流改善剤、ビタミン剤や神経賦活剤などが薬が処方されます。病院によっては顔面神経減荷術の手術や星状神経節ブロックなどを行うところもあります。

Ⅰ)副腎皮質ホルモン

急性期治療として経口副腎皮質ホルモンおよび抗ウイルス薬の使用が推奨されており,日常臨床においても発症早期に経口副腎皮質ホルモンおよび抗ウイルス薬が使用されることが多いです。しかしながら副腎皮質ホルモンや抗ウイルス薬の有効性や至適投与量は充分に明らかにされておらず,これらの薬剤の使用に関する明確なエビデンスが存在しないのが現状です。発症1週間以内の副腎皮質ホルモン投与が寛解率を17%増加させ、さらに副腎皮質ホルモン投与が後遺症としての病的共同運動(synkinesis)の発症を抑制することが報告されています。完全ベル麻痺に対しては副腎皮質ホルモン大量点滴療法が経口副腎皮質ホルモン療法より有意に改善率が高いことを示す報告があります。

Ⅱ)抗ウイルス薬

抗ウイルス薬の使用については賛否両論ありますが、Bell麻痺患者の顔面神経減荷術時に採取された神経内液や後耳介筋,急性期の患者唾液から単純ヘルペスⅠ型(HSV-1)が検出されることが報告され,以後Bell麻痺とHSV-1との関係が強く示唆する報告がされて、抗ウイルス薬使用を支持する根拠となっています。抗ウイルス薬使用が薦められていいます。Bell麻痺の原因として1型単純ヘルペスウイルスがクローズアップされていることも併せて,最近は急性期治療として副腎皮質ホルモンとの併用で抗ウイルス薬を使用することが推奨されています。

Ⅲ)星状神経節ブロック

星状神経節ブロックは根本的に副交感神経の活動を抑制して頭頸部の血流などを改善して麻痺した神経の賦活化をはかるものです。顔面神経麻痺の治療として,国際的に信頼できる評価はほとんどされていません。日本では麻酔医を中心にその有効性が強調され、しばしば実施されています。効果は患者により効く例もあり、そうでない場合もあります。客観的な有効性については懐疑的です。

Ⅳ)高圧酸素療法

日本の病院ではほとんど行われていません。Racicらは79例をランダム化して,高圧酸素療法に有意な治療効果があったと結論づけましたが、この治療法では一般的に内耳の気圧性耳障害がかなりの頻度で起こることが知られ、入院が必要なことや治療の煩雑さなどを考慮すると日本の病院はほとんど行わないようです。

翁鍼灸治療院